「止められるなら恋じゃない」
「思い出を大切にできないやつが 今もこれからも大切にできるわけがない」
「泣いたぶんだけ強くなれるわけじゃない 泣いて頑張ったぶんだけ強くなれる」
恋、人間関係、将来……
あなたが言えなかったこと、言って欲しかったこと。
苦しいけれど前を向ける、
切なくもあたたかい言葉たちを
ぎゅっと詰めこんで1冊にしました。
【contents】
1 大好きなきみへ
2 大切なきみへ
3 頑張り屋なきみへ
4 忘れられないきみへ
・・・という感じで僕の書いた本があります。
僕とプライベートで関わりのあるひとには「本気で手にとって欲しくない1冊」赤裸々に、僕の思っていることが書いてあります。
『言葉にしなくちゃ』には「ガールズトーク」というタイトルの長文が載っています。実はこれ、かなり短くしてあって本当はもっと長いんです。収録されているものとは雰囲気とか内容がまた違うんだけど、もしよかったら読んで欲しくて、公開しますね。
♡♡♡
ガールズトーク (番外編)
「ねえ、これどう思う?」
渋谷から歩いて15分ほどの場所にある、いつでも座れるいつものちょっぴり古いカフェで、不機嫌そうに座るきみに見せられたのは恋人とのLINEのやり取り。きみがぼくを呼び出すのはいつだってこれ。恋人への愚痴。返信がそっけない。既読がつかない。浮気されてる。不倫。さびしい。。知らないよ!ちょっとヘヴィーなのもあるなあ!?とか思いつつも、きみに呼ばれるとこんな夜中でもすぐに仕事をほっぽり出してきてしまうぼくだってどうしようもない。差し出された画面を見つめながら、ふたりだけのメッセージを盗み見することに申し訳なさを感じたけどちょっとうれしかったりもした。ぼくはきみの手元をみて、アイスコーヒーとオレンジジュースをおばさんウェイトレスに頼んだ。
ぼくは知ってる。きみはやさしい男に興味がない。
好きだと言ってはうるせえと突き飛ばされ、約束の時間は守らないしむしろ来ない、自分の行きたいところへ行っては帰りたいとき勝手に帰る、切った髪の毛も新しい服にも気付いてくれない、きみのことなんてなにひとつ考えてくれない、どっか行きたいなら行けよと言ってくる、きみがいなくても生きていける、そんな男にきみは恋をする。きみのことが大好きで、きみからのLINEがうれしくて呼び出されたらすぐに家を飛び出したり、きみの言って欲しい言葉を必死になって探したり、きみのことしか考えられない男に、きみは興味がない。
ぼくがきみを好きになってもうすぐ2年。きみのことをだれよりもなによりも1番に考えてきたせいか、ぼくはきみの親友になっていた。昼に食べたパスタが不味かったとか、空がきれいじゃんとか、昼休み〜、とか些細でくだらないLINEは毎日するし、少しの空き時間には電話をして週に1度はこのカフェでガールズトーク(ぼくはガールではないが彼女はそう呼ぶ)をしたりする。たぶん歴代の恋人たち、きみがいなくても生きていける男たちよりもあたりまえだけどぼくはきみのことをわかっていると思う。でもぼくはきみの恋人じゃない。きみにとってはそんなこと、どうでもいいんだ。
ふたりで泊まりの温泉旅行にいくことも、はぐれそうな花火大会でふいに手を繋ぐことも寒がるきみの手を握ることも、何気ないひとことできみをドキドキさせることも、帰り際に帰りたくないと思わせることも、会いたくて泣かせることもできない。「恋人つくらないの?」ときみに言われるたび「いらないよ。」と瞬時に返せるくらいにはなった。そうするときみはすこしうれしそうに「ふ〜ん。」と右斜め下を向くおきまりのパターン。ぼくがきみを好きなこと、きみはとっくに気付いてるんだろうな。ぼくとは付き合えないけどぼくがだれかと付き合って、自分の呼び出しに応じなくなるのが嫌なのかもね。”性格悪いだろ、そんなやつやめとけよ” 友達に相談するたび耳にタコができるほど、きみに会うと脳内で勝手にリピート再生されるほど、に忠告されたってそれでもぼくはきみが好きだからこれからも会いたいと思ってしまう。恋こわい。止められない。
好きだと言ってしまえばなにか変わるかもしれない。思いを伝えることで、フラれたとしてもぼくはすっきりして、次の恋に進めるかもしれない。いや、そもそももしかしたらぼくと付き合ってくれるかもしれない。でも怖いのだ。めちゃめちゃ怖いのだ。気持ちさえ伝えなければきっとずっと続けられるのではないか。都合の良い関係?だれになにを言われようと、きみに会えなくなるよりはずっといい。終わるよりずっといい。会えなくなる可能性がすこしでもあるのなら、それはしたくなかった。
「はあい、お待たせ」
おばさんウェトレスが深夜の気だるいテンションでドリンクを持ってきた。
ありがとうございます、おばさんに微笑むときみはすぐにキッとぼくをみて「ねえ、で、どう!」とぼくの右目を覗き込む。ぼくはスマホを見るとき左目を閉じる癖がある。ガムシロップをいれる暇もなく焦って苦手なブラックコーヒーをひとくち飲んで、ぼやけるほど顔に近づけられた彼女のスマホをようやく左手で受け取る。そうすると彼女はこくんと頷いてオレンジジュースをむすっとしなが飲む。”おいしい…”と心の中で言ったのが聞こえた。きみの言って欲しそうな言葉をぼくは探しては、きみに渡す。それできみがすこしでも楽になれたらいいと思う。きみが会いたいときに、ぼくを呼んでくれたらいい。きみがいないと生きていけない男がいることを確認したいとき、ぼくを呼んでくれたらいい。ぼくはきみじゃないとダメだから、だれがなんと言おうとそれでいい。会えなくなるより、ずっといいんだ。ガールズトークでもいい。なんでも付き合うさ。きみに会えるとうれしいんだ。
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ハジメ☆ファンタジー (@HAJIMEFANTASY)