ハジメ☆ファンタジーのツイートに、
ごめん さんがイラストとストーリーをつけていくこの企画。今回は「悲しいのも 嬉しいのも 全部きみだった」。
待ち合わせはいつも渋谷がいいと言った。
目が眩むような人混みの中で、きみが僕を見つけたときのあの顔が好きだ。安いチェーン店でごめんねと言うと、「なんで?これがいいの」ときみがわらった。
エンドロールで繋いだ手の感触とか、改札を抜けてもう一度振り返る瞬間とか、電話越しのドライヤーの音とか、きみだったらなんでも嬉しかった。
ふたりにとって最後の日、知らない誰かの愛の歌が駅前にやたらと響いていた。
僕ときみの手はからっぽだった。
どこで間違ったんだろうときみがぽつりとつぶやいたけど、僕は少し黙ってありがとねとだけ言った。
あの時の僕らの純真さが間違っていたなんて思いたくはなかったのだ。
それからしばらくして、きみに新しい恋人ができたことを知った。
「嬉しいのも悲しいのも、全部きみなの」と照れた横顔を反芻したが、無意味だと自分を笑った。
僕だってそうだった。
左目の下の泣きぼくろ、笑ったときのえくぼ、僕のお気に入りだった。
きみの新しい恋人は僕より背が高いのだろうか。
僕よりよく笑うひとだろうか。
今度は間違えないように、今度こそ、どうかしあわせに。
しあわせになろうね。
第2回 失くしてからの方が価値が上がるだなんておかしな話だ