ハジメ☆ファンタジーのツイートに、
ごめん さんがイラストとストーリーをつけていくこの企画。今回は「きみはどこにもいきませんか」。
【ぼく】
きみが貸してくれた小説のラスト、本当はちゃんと覚えていた。
「読書は苦手だからさ」と言うときみが少しだけ寂しそうな顔をした。
まつげが降りたときのきみの表情が好きだったからそれ以上何も言わなかった。
でもどうせ明日には何もなかったように笑っているんだろう。
嘘つき同士お似合いだと思わないか。
いつか離れていく日がきても、ぼくはやっぱり平気なふりをするんだと思う。
そしてきみも寂しそうに笑うんだと思う。
【わたし】
「あの話のラストってどうなったか覚えてる?」わざと聞いてみた。
読んでないんでしょうどうせ。
それでもよかった。
小さい頃、お気に入りの絵本をなくしたことがある。
正確には、なくしてからお気に入りだったことに気づいたのだけど、それからどんなに名作と呼ばれる本を読んでもあの絵本を超えることはないと思えるようになった。
なくしてからのほうが価値が上がるだなんておかしな話だ。
もしわたしがある日ふらりといなくなったのなら、きみにとってのわたしもそういう存在になるのかなとたまに思う。
でもきみは嘘が上手だから、わたしはそういうことにも気づかないんだと思う。
第3回 行き先の曖昧な言葉ばかりを溜め込んでいく日々が続く