きみの変化を近くて遠い場所で見守り続けるというのは、思っていたよりもずっとつらいことだった。
フィクションでよくある幼馴染ってしっかりとした立ち位置があるけれど、 現実のそれはすごく曖昧なもので、実際問題、私はただほかの子よりちょっと仲がいいというだけの話だ。
きみの好きな子のことも、別の誰かから聞いたことだった。
あの子より私のほうが付き合いが長いだとか、映画の好みが一緒だとか、好きな味を知っているとか、 帰り道が一緒とか。
そんなことに意味なんてないのだ。
けれど、意味のないことにすがるしかなくて、それがずっと苦しかった。
獲得と損失はいつも同時に起こるものであると、 いつだったか誰かがテレビで話していたけど、だとすると私がきみを諦めることで得るものってなんなんだろうって時々思う。
「なんでも相談してよね、一応幼馴染なんだからさ。」
いつもの歩道橋、口をついて出た言葉に自分でも驚いた。
今日はここでばいばいにしよう と言うときみが私を少しの時間見つめて、それから静かに頷いた。
手を振る私に応えるよ うに、きみが両手で四角を作った。
ファインダーみたいに私の方を覗いて、いたずらみたいな笑みを浮かべていた。
ばいばい、すきだよ、またあした。